「眼部帯状疱疹」
帯状疱疹という病名を聞いたことはありますか? 帯状疱疹はヘルペス属ウイルスによって引き起こされる疾患です。このウイルスは水痘(水ぼうそう)の原因でもあります。
水痘にかかったり治癒した後も、このウイルスは身体のあちこちの神経節に残り潜んでしまいます。そして、病気や疲労などで体の抵抗力が落ちた時にウイルスが活性化し、身体のいろいろな箇所に帯状疱疹を引き起こします。
「眼部帯状疱疹」は、三叉神経第1枝の領域(額や頭皮、眉毛部分、上まぶた、鼻の皮膚に相当する部分)に病変が現れた場合をいいます。
ピリピリ、チクチクと感じる痛みと皮疹(発赤、水疱)が出現します。
左右どちらかだけに起こるのが特徴的で、反対側にまで広がることはまずありません。強い痛みを伴いやすく、皮膚がきれいに治っても長期間痛みや刺激感が残ることがあります。症状が重ければ、ペインクリニックなどでの治療が必要になります。
目の症状としては、結膜炎による充血(赤目)、角膜炎(黒目のキズ)や虹彩炎(茶目の炎症)などがあります。
また、虹彩炎に伴い眼圧が上昇して緑内障になったり、まれに神経麻痺や網膜視神経炎を起こし、視力が低下する場合もあります。
帯状疱疹の治療は抗ヘルペスウイルス薬の全身投与(内服)が基本です。初期のうちに治療を始めると比較的治りが早く、皮膚症状が出て72時間以内に治療を開始すれば後遺症が出にくいと言われています。
眼部の場合、抗ヘルペス薬の軟膏を1日5回、まぶたに塗ります。軟膏は目の中に入っても特に問題はありません。症状に応じて、抗菌剤や炎症を抑えるステロイドなども処方します。
帯状疱疹は、免疫力や体力が低下したときにかかりやすい病気なので、まずは安静にしてしっかりと休養することが大切です。初期治療が大事なので、目の周囲に違和感があれば、早めに眼科の診察を受けましょう。
〈小杉眼科副院長・林 康司〉
〈第4月曜掲載〉
(小杉眼科副院長・林康司)