多焦点眼内レンズとは
眼内レンズは大きく分けると「単焦点眼内レンズ」と「多焦点眼内レンズ」の2種類があります。単焦点眼内レンズはピントが合う位置が1つなのに対し、多焦点眼内レンズは複数にピントが合うレンズです。
単焦点レンズの場合、遠方か近方どちらを重視するかを決めて度数を設定するため、例えば遠方を重視した際には、読書等近くを見るときにはメガネが必要となります。
1つの距離にピントを合わせる単焦点眼内レンズに対して、焦点を2つ以上備えているのが多焦点眼内レンズになります。これによりメガネに依存する頻度を減らすことができ、メガネのかけはずしの煩わしさを解消することができます。

単焦点の見え方

多焦点の見え方
多焦点眼内レンズのデメリットについて
多焦点眼内レンズは遠くも近くもはっきりと見えることができ、メガネ無しで見える範囲が広がることが最大のメリットです。手術をされた殆どの方は見え方に満足されていますが、一方で多焦点眼内レンズは単焦点レンズに比べいくつかのデメリットがあります。近年ではデメリットを克服したレンズもありますが、生活スタイルによっては単焦点を選択した方が生活の質が向上する可能性があります。
光が散乱して見えるハローや、光が長く伸びてまぶしく見えたりするグレアを感じる場合もありますので、事前に医師と確認や 検証を行う必要があります。

ハロー

グレア
単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズの比較
単焦点レンズと多焦点レンズの評価
一般的な多焦点レンズと単焦点レンズとの比較表になります。
ご自身の生活スタイルによってどこに焦点を合わせるかお選びいただきます。

※●、△、×はいずれも眼鏡非装用にての評価です。
ハロー・グレアの比較

単焦点眼内レンズ
■ 91%・・・感じない
■ 9%・・・感じるが支障はない

多焦点眼内レンズ
■ 65%・・・感じない
■ 35%・・・感じるが支障はない
当院取り扱い多焦点眼内レンズ
近年の技術革新により老眼や乱視が治る「眼内レンズ」が登場してきました。老眼治療の眼内レンズは「多焦点眼内レンズ」と呼ばれ、さまざまな種類があります。 優れた多焦点眼内レンズは、遠くから手元まで落ち込み無く明瞭に見えます。多焦点眼内レンズは、遠くも手元も、そして意外に大切な中間距離も鮮明に見える3焦点眼内レンズが主流となっています。 当院では積極的に海外の情報収集を行っており、最近では5焦点眼内レンズの取扱いを行っています。
自費の多焦点眼内レンズ
海外輸入の多焦点眼内レンズになります。選定療養対象外となり自由診療となります。
Galaxy(ギャラクシー)

スパイラル(螺旋構造)IOL
製造メーカー:イギリス Rayner社
近く(40㎝)から遠く(∞)まで自然な見え方
ブラジルのJoão Lyra博士と共同で開発された多焦点眼内レンズで、独自のAIエンジンを用いて、全世界で初めてスパイラル(螺旋構造)光学部で作られています。3焦点眼内レンズと同様に、遠方から近方まで正確に光学系をコントロールしており、すべての距離をスムーズに見ることができます。非回折の螺旋構造光学部をしているため、他の多焦点眼内レンズに比べてハロー・グレアといった異常光視症を単焦点眼内レンズと同等にまで抑えており、ライトロスがありません。
Intensity(インテンシティ)

回折型5焦点眼内レンズ
製造メーカー:イスラエル Hanita社
近く(40㎝)やや近く(60㎝)中間(80㎝)やや遠く(133㎝)遠く(∞)
近方、中近、中間、遠中、遠方の5つの距離に焦点を合わせることができる5焦点眼内レンズであることが最大の特徴です。 独自の新しい設計思想を使用した光学設計で、光エネルギーのロスが6.5%と他の眼内レンズに比べ少なく、近方~中間、中間~遠方にも焦点が合わすことが出来る為、スムーズで連続した見え方を実現しています。5焦点レンズの為、日常のあらゆる活動をカバーすることができ、ハロー・グレアも少ないことから夜間での運転を多くされる方にも向いています。
自費の多焦点眼内レンズの価格について
当院で取扱いのある自費の多焦点眼内レンズは、乱視有りと無しで金額が異なります。
レンズ名 | 乱視なし(税込) | 乱視あり(税込) |
---|---|---|
Intensity | 660,000円 | 770,000円 |
Galaxy | 660,000円 | 770,000円 |
選定療養対象の眼内レンズ
選定療養とは追加費用を患者さんが負担することで、保険適応の治療と保険適応外の治療を併せて受ける事ができる制度です。
選定療養についてはこちらのページをご覧ください。
Vivinex Gemetric(ビビネックス ジェメトリック)

3焦点回折型眼内レンズ
製造メーカー:日本 HOYA株式会社
近く(40㎝)中間(80㎝)遠く(∞)
Vivinex Gemetric(ビビネックス ジェメトリック)はHOYAから発売された日本企業初の多焦点眼内レンズです。遠方から近方まで質の高い見え方を実現した多焦点眼内レンズです。
従来の多焦点眼内レンズと比較して、光エネルギーの損失が少なく、効率的に光を眼内に取り込むことができます。これにより、コントラスト感度の低下を抑え、よりクリアな視界をもたらします。
Acriva Trinova PRO(アクリバ トリノバ プロ)

3焦点回折型眼内レンズ
製造メーカー:ドイツ VSY Biotechnology社
近く(40㎝)中間(80㎝)遠く(∞)
Acriva Trinova PRO(アクリバ トリノバ プロ)は、ドイツのVSY Biotechnology(バイオテクノロジー)社が製造する多焦点眼内レンズで、日本国内での販売はわかもと製薬が取扱いを行っています。
Sinusoidal Vision Technologyにより、回折構造にみられる重なり合うパターンのャープなエッジがなく、異常光視現象(グレア・ハロ・スターバースト)を軽減しています。
遠方(5m)~中間(80㎝)~近方(40㎝)の視力の改善が期待でき、眼鏡依存度を軽減し、日常の様々な活動に必要なシームレスな視覚を提供するよう設計されています。
TECNIS PureSee(ピュアシー)

3焦点EDOF眼内レンズ
製造メーカー:アメリカ Johnson&Johnson社
Tecnis PuireSeeは焦点深度拡張型(Extended Depth of Focus:EDOF) と呼ばれるタイプの多焦点眼内レンズとなり、遠距離、中距離、近距離の日常生活のあらゆる場面をより自然に、シームレスに見ることができます。
また、単焦点眼内レンズと同等の高コントラストと低照度性能を実現していると共に、ハローやグレア、スターバーストなどの夜間光視症を単焦点眼内レンズと同等まで抑えており、夜間によく車を運転している方に向いている多焦点眼内レンズです。
反面、近見視力はTECNIS Synergyに比べ若干劣るという特徴があります。
TECNIS Odyssey(テクニスオデッセイ)

3焦点EDOF眼内レンズ
製造メーカー:アメリカ AMO社
近方(35㎝)やや中間(50㎝)遠方(∞)
3焦点EDOF 焦点深度拡張型(Extended Depth of Focus:EDOF)と呼ばれるタイプの多焦点眼内レンズの為、
遠方から手元まで自然な見え方の眼内レンズになります。
読書や料理、パソコン作業だけでなく、活発的に運動をされる方にも向いているレンズです。
15本の回折構造を持ち、TECNIS Synergyに比べハロー・グレア、スターバーストなどの異常光視症が改善しています。
Clareon PanOptix(パンオプティクス)

回折型3焦点眼内レンズ
製造メーカー:アメリカ アルコン(Alcon)社
近く(40㎝)中間(60㎝)遠く(∞)
一般にパソコン作業をする際の距離は60㎝と言われている為、他の多焦点レンズに比べパソコン作業を多くされる方に適しています。 近方や遠方にも焦点が合うため、遠方を見るゴルフなどのアウトドアから、パソコン・料理などの中間距離、読書などの手元の作業などすべての距離において快適に見えます。乱視の矯正が可能で、安定性に優れている多焦点眼内レンズです。

Clareon Vivity(ビビティ)

2焦点EDOF眼内レンズ
製造メーカー:アメリカ アルコン(Alcon)社
中間(60㎝)遠く(∞)
Clareon VivityはEDOF(Expanded Depth of Field)と呼ばれる焦点深度拡張型の多焦点眼内レンズで、独自の波面制御により2焦点眼内レンズでありながら優れた遠方視と中間視および実用的近方視を実現しています。これにより術後の眼鏡依存度の軽減が期待できます。ハロー・グレアといった多焦点眼内レンズのデメリットとなる視覚障害を単焦点レンズと同程度まで軽減します。
FINE VISION(ファインビジョン)

回折型3焦点眼内レンズ
製造メーカー:ベルギー PhysIOL社
近く(35㎝)中間(75㎝)遠く(∞)
遠くと近く、遠くと中間距離の2種類のバイフォーカル(2重焦点)レンズを組み合わせた二重構造になっているため、遠くと近く、及び中間距離が見える3焦点レンズになっています。
3焦点眼内レンズの元祖ともいえる眼内レンズで、ヨーロッパでの使用実績の多いレンズです。スポーツが好きで日常的に車の運転をしていて、仕事は大きな机でデスクトップのパソコンを使用しているという様な活動的な人にお勧めです。
※FINE VISIONの乱視無しのレンズは選定療養となります。
選定療養の多焦点眼内レンズの価格について
選定療養の多焦点眼内レンズは、レンズの種類・乱視有無で金額が異なります。
レンズ名 | 乱視矯正 | 片眼(税込) |
---|---|---|
ファインビジョン (2焦点回折型) |
乱視なし | 308,000円 |
ビビネックス ジェメトリック (3焦点回折型) |
乱視なし | 297,000円 |
乱視あり | 330,000円 | |
アクリバ トリノバ プロ (3焦点回折型) |
乱視なし | 330,000円 |
クラレオンパンオプティクス (3焦点回折型) |
乱視なし | 330,000円 |
乱視あり | 385,000円 | |
クラレオンビビティ (2焦点EDOF) |
乱視なし | 330,000円 |
乱視あり | 385,000円 | |
テクニスオデッセイ (3焦点EDOF) |
乱視なし | 330,000円 |
乱視あり | 385,000円 | |
テクニスピュアシー (3焦点EDOF) |
乱視なし | 330,000円 |
乱視あり | 385,000円 |