近視進行予防と治療

子供の近視抑制について

大切なお子様の眼を守るために・・・

近年では近視の人が世界的に増加しており、大きな社会問題となっています。

子供の近視

近視には遺伝的要因と環境要因があります。

近視の多くは学童期に発症し、小学校4~5年生にかけて進行が著しく、20歳くらいまでで進行が止まることが多いようです。環境要因はパソコンやゲーム、スマホなど近くを見る機会が多いこと、または野外で遊ぶことが少なくなり日光に当たる時間が減ったことで近視になると言われています。

近視進行予防治療が将来のお子様の目や生活に大きく影響します

近視は単純近視と病的近視に分けられます。大半の方は単純近視と考えて良いでしょう。病的近視は網膜や視神経が障害され、眼鏡などで矯正しても視力がでない失明の原因となります。6D以上の近視で網膜剥離になる確率が増え、重篤な疾患にかかりやすくなると言われています。30%近視が抑制出来ると、重篤疾患になる確率が24%から5%まで減るとの報告があります。

当院では「お子様の近視進行抑制」に早くから取り組んでいます。

子供たちは物をはっきりと見ることが出来ることで、多くのことを学習し成長します。きちんと見えているか、見えていないのかを、一度確かめてみてはいかがでしょうか。

物が見えるしくみ

目に入ってきた光は、角膜と水晶体を通り屈折して、網膜に像が写し出されます。目はピントを合わせるために、毛様体(もうようたい)により水晶体の厚さを調節しています。また、虹彩(こうさい)により光の量も加減します。

ものが見えるしくみ

近視とは?

近視は屈折異常のひとつで「無調節の状態で眼に入る平行光線が網膜の手前で結像する眼の屈折状態」と定義されています。裸眼の状態で近くは見えますが、遠くは焦点が合わずにぼやけてしまいます。

正常の屈折

正常の屈折

近視の屈折

近視の屈折

参考:参天製薬「近視のはなし」

近視の原因

近視の原因は遺伝によるものと生活環境によるものがあります。

両親がいずれも近視ではない子供に比べ、いずれも近視の子供は近視になるリスクが高くなるという結果があります。

また、テレビや本を近くで見たり、近年ではスマホ、タブレットに近づきすぎると、その状態でピントが合うように眼球が伸びるため近視が進むと言われています。

近視進行のメカニズム

新生児の小さな眼球は遠視の傾向がありますが、成長するにつれて目の長さ(眼軸長)が伸びて遠視が弱くなっていきます。

そのため、網膜上の像のボケが眼の成長を促すと考えられ、遠視性のボケ(下記図①:網膜より後方に焦点を結んだ状態)は眼球の成長を促し、眼軸長を伸ばします。反対に近視性のボケ(下記図②:網膜の手前に焦点を結んだ状態)は眼球の成長を抑制し、眼軸長の伸びが遅くなります。

①と②の円は眼球の断面を示しています。

青線の弓状に示している線は、眼に入った光線が結像する点が作る面です。

眼が成長し正視に近づいたら、それ以上成長しないことが望ましいのですが、遠視性のボケがあれば眼球は成長を続け近視が進んでしまいます。

近視進行を抑制する遺伝子について

近視の進行を抑制すると考えられているEGR1(Early growth Response 1)という遺伝子があります。この遺伝子はバイオレットライトが目に入ると活性化されることが慶應義塾大学の研究チームにより分かりました。

臨床研究の内容

13~18歳の学童でバイオレット光を透過する(透過率80%以上)コンタクトレンズを装用している子供の眼軸長伸長量は0.14mm/年だったのに対して、バイオレット光透過を抑制した(透過率80%未満)のコンタクトレンズを装用している子供の眼軸長伸長量は0.19mm/年で、バイオレット光を透過するコンタクトレンズを装用している子供の方が眼軸長伸長量が少ないことが分かりました。

 異なる透過率のコンタクトレンズ装用による眼軸長変化量の比較

また、現在日常に使用しているLEDライトや蛍光灯などの照明にはバイオレット光は殆ど含まれておらず、メガネやガラスなどの素材もUVカットに加えてバイオレット光を殆ど通さないことが分かりました。

出典:Torii H, Kurihara T, Seko Y, Negishi K, Ohnuma K, Ohnuma K, Inada T, Kawashima M,…Tsubota K.EbioMedichine,2017

近視の視力矯正について

近視の視力矯正は、メガネやコンタクトレンズを用いて行われるのが一般的です。単純近視の場合はメガネをかければ正常の視力まで矯正出来ます。メガネやコンタクトレンズを作る場合は、眼科医に目の病気や異常などを検査してもらい、適切なメガネやコンタクトレンズを処方してもらいましょう。

近視の矯正方法(凹レンズについて)

近視の矯正には凹レンズを使います。凹レンズは焦点(ピントが合う点)を遠くにする働きがあり、近視の人が適切な度の凹レンズをかけると、網膜にピントが合って遠くがよく見えるようになります。

メガネについて

近視になったからといって、日常生活に支障をきたさなければ、すぐにメガネをかけなければならないということはありません。黒板の字が見えにくくなるというような不都合が生じてきたらメガネをかけてください。また、メガネを常にかける必要はなく、黒板や遠くを見るときなど必要に応じてかければよいのです。近年ではメガネをかけた方がかけないよりも若干近視の抑制につながったという研究結果もあります。

コンタクトレンズについて

コンタクトレンズは角膜の表面に接触させて用いるレンズで、メガネをかけたくない人に好まれています。左右の視力に差がありすぎてメガネが使えない場合も矯正でき、メガネのように曇ったりせず視野が広くなるという優れた点があります。しかし、慣れるまでに時間がかかる、異物感がある、角膜を傷つける場合があるといった欠点もあるため、使用する時は眼科医と相談して決めましょう。また、レンズの取り扱いや管理などが大変なので、小学生の間はメガネをかけることをお勧めします。

近視の進行予防について

◎近視の進行を抑制することが大切な理由

子供の近視は、主に眼球が楕円形に伸びてしまう(眼軸長が伸びる)ことでピント位置がずれ、生じるケースが多くあります。
近くを見ることが習慣化してしまうと近視になりやすく、一度眼軸長が伸びてしまうと戻ることがありません。そのために眼軸長の伸びを抑えることが、近視の進行を抑制するために重要となります。

当院での取り組み(近視の進行予防)

点眼での進行予防

低濃度アトロピン(マイオピン)点眼

Myopine(マイオピン)は小児期の近視の進行を軽減させることを目的にアトロピンを0.01%配合させた点眼薬で、Singapore National Eye Centre(SNEC:シンガポール国立眼科センター)の研究に基づいて開発されています。
マイオピン(アトロピン配合)点眼薬は、近視の進行を遅らせる(眼軸長の進展を抑制する)という点で統計的にも臨床的にも有意義な効果が確認されている治療法の一つです。

眼鏡での進行予防

マイオキッズレンズ(旧MCレンズ)

ZEISSマイオキッズレンズ(旧MCレンズ)は、児童や青少年の近視進行を抑えるために特別に設計されたメガネレンズです。 マイオキッズレンズを使うことで長時間の細かい作業時などピント調節の緊張状態を緩和し、目への負担を軽減します。

 

マイオキッズレンズの特徴

メガネレンズの上半分は遠くがクリアに見えるように設計され、下半分はアクティブゾーンとして近距離作業時の見え方をサポートします。

近視の進行を左右する環境要素は手元での作業です。通常の状態において、至近距離にあるものを見る場合、眼の筋肉を使ってピントを合わせようとします。この過程は「調節」と呼ばれています。至近距離を見る時に必要なこの「調節」を手助けすることで、近視の進行を抑制することが可能だと考えられています。

その他の進行予防

オルソケラトロジー

毎日就寝時に専用コンタクトレンズを装用し、角膜の形状を変化させることで近視や乱視を矯正します。日中は裸眼で生活することが出来ます

 

 

単焦点眼鏡と比較すると、オルソケラトロジーの方が36%近視抑制効果があると言われています。

遠くを見た時に網膜の周辺のピントが合っていないと眼軸が伸びるのではないかと言われるようになりました。オルソケラトロジーは周辺部のピントのずれが改善されるので近視の進行が抑制されると考えられています。

オルソケラトロジーについては下記のページにて詳しくご説明をしております。

サプリメント(クリアビジョンジュニアEX)

クリアビジョンジュニアEXは子供の近視進行抑制に効果が期待されているサプリメントです。クチナシ果実由来の「クロセチン※1」という色素成分を含み、摂取することで近視の進行抑制に関する遺伝子「EGR-1※2」を活性化させると言われています。

 

※1 クロセチン:クチナシの果実などに含まれる色素成分。

※2 EGR-1(early growth response 1):近視を抑制する遺伝子の一つ。

生活習慣改善による近視のアイケア

近視の矯正や治療方法を選択することに加え、子供の目の健康のために出来ることがたくさんあります。生活習慣を見直すことで近視の進行を防ぐことが出来ると言われています。

屋外で活動する機会をつくる

屋外で活発に活動する子供の方が、近視が進行するリスクが低いという研究結果があります。太陽光に含まれる紫色の波長の光「バイオレットライト」が近視進行抑制に大きく関係していることが明らかになりました。毎日少なくとも1時間は屋外で活動する機会をつくることをお勧めします。

デジタル機器は適切な距離で

デジタル機器から適切な距離を取ることと姿勢を良くすることは背中にも目にもいいことです。

適度な休憩をとる

読書やパソコンなど近距離での作業中は、30分に1回、2分程度の休憩をとることが重要です。休憩中に遠くを眺めるようにしましょう。

健康的な食事をとる

バランスのとれた食生活は目だけでなく身体の成長にも影響を与えます。

十分な睡眠をとる

睡眠は体と神経エネルギーの回復にとって重要です。睡眠不足は疲労やストレスの原因となり、視覚を含む日常生活の活動に影響を及ぼします。

照明環境に気をつける

適切な照明は、読書や学習から遊びまで、あらゆる活動において必須です。照明環境に気を配り、子供が十分な明るさの照明の下で活動できるようにしましょう。
可能な限り自然光を利用することをお勧めします。