瞳の相談所|最新検査機器「OCT」

みなさんはCTやMRIという画像診断をご存じかと思います。人体を輪切りにしたような断面を撮影して、体外からは見ることのできない内部の構造を画像として見えるようにする方法です。眼科でもOCT(optical coherence tomograph:光干渉断層計)というCTやMRIと似たような検査機器があります。
眼科で一般的に行われる眼底検査では網膜表面の状態は把握できても、その奥の状態まで正確に知るのは困難でした。OCTでは網膜の断面や神経線維の厚さなどを調べることができ、眼底写真では平面的な情報しか得られなかったものが、OCTでは連続撮影により3D画像として表示できます。
実際の検査では専用の台に顎を乗せるだけで、造影剤を使ったり、目に触れたりすることなく、検査自体も数分で済みます。そのため体にはほとんど負担がかからないというのがOCTの特徴です。また、強い白内障がある場合を除けば、瞳孔を開かなくても撮影できます。OCTの利点として、詳細な検査をできるだけでなく、画像を提示することで、患者さまの病気に対する理解が深まることも見逃せません。
以前は、大学病院など一部の医療機関にのみしかOCTが設置されていませんでしたが最近では眼科開業医の多くが導入しています。当初は解像度も低く、構造が粗く見えているだけでしたが、現在は非常に高画質になっています。
OCTが役立つ代表的な疾患としては緑内障、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症などがあります。これらの疾患は日本人の中途失明の原因の上位を占めており、OCTは早期発見や病態の把握、治療方針の決定や治療効果の評価に力を発揮します。例えば、緑内障では視神経とその周囲の神経線維を立体的にみることで、自覚症状がない初期でも異常を捉えることができます。また、加齢黄斑変性になると黄斑部(網膜の中でも視機能が最も鋭敏な部分)が萎縮したり、脈絡膜新生血管が生じたりしますが、OCTを使うと萎縮や新生血管の有無・病型(滲出型か萎縮型か)を診断できます。また、最近では前眼部OCTという角膜や虹彩など、眼球の前方の組織の観察もできるタイプも開発されており、応用される疾患は今後ますます広がると思われます。
(なおOCT検査には平成20年4月1日より健康保険が適応されています。自己負担額は200円(1割負担の方)または600円(3割負担の方)です。)

(小杉眼科副院長・林康司)